2012年04月28日

本の紹介−富田玲子(2007)『小さな建築』みすず書房

本の紹介−富田玲子(2007)『小さな建築』みすず書房−

建築に関して僕は門外漢ですが、昨年の四月に『小さな建築』の著者である富田玲子さん主催でさらに佐藤学、(教育学者、僕の指導教官)谷川俊太郎(詩人)が対談者として参加するシンポジウムに行く機会がありました。富田さんは学校もいくつか設計していて、その関係で僕のお師匠さんでもある佐藤学とつながりがあり、シンポジウムにいってみようかなと思いました。(ちなみに富田さんと谷川俊太郎は幼い頃に家が近所だったらしい。そして佐藤学と谷川俊太郎は文学教育でつながりがある。)このときは特に本も買わなかったわけですが、アヴァンセで教えるようになり、担当している子で建築に興味を持っている子がいたのでこの本を薦めてみたりしたわけです。そんな経緯で先月あたりに読んでみました。自分が教育で考えてきたことと似たような部分が随所に見られてそれが一番面白かったです。僕がいつも考えていることは教師が学ぶ側の視点にたって教育を設計していくということです。教える側というのは人数が多いと宿命的に一律の教育を施しがちになります。でも学び手はそれぞれ固有の文脈・バックグラウンドを抱えてそこに存在しています。そう考えたときにその学び手に合わせた形で学びへと導くことが教え手の役割だと考えています。(僕自身もできる限りそのようにしているつもり。)

富田さんが所属する「象設計集団」も基本的に同じようなスタンスで建築を行っています。つまり予め決まった用途の建物があってそれを建てるのではなく、その地域の文脈に即して建物を設計していくということです。「象設計集団」には「七つの原則」あります。2つ紹介しましょう。

【場所の表現】私たちは、建築が、その建つ場所を映し出すことを望んでいます。デザインが場所や地域の固有性を表現するよう努めます。村を歩きまわり、景観を調査して、土地が培ってきた表情を学びます。人々の暮らしを見つめ、土地の歴史について調べます。このようにして、デザインのなかにその場所らしさを表現するための鍵やきっかけを掘り起こしてゆきます。
【自力建設】自力建設とは、単に具体的な建設を指すのではありません。自らの地域を、自らの手で作り上げてゆく哲学です。近代の制度を超え、地域を越える生命の叫びです。方法論を場所にもち込むのではなく、場所がもつ初源的な力を発見し、それらを収斂させることなのです。機械よりは多くの雑多な人々、知識よりは多くの雑多な人々、知識よりは知恵、速さよりは持続力、理性よりは情熱、狂気、妥当よりは過剰、規範よりは埒外のものごと結論よりは終わりのない問いかけ、形姿に求められものは魔力。」

是非読んでみてください。自伝風にもなっているので富田さんが建築家になった足跡もわかります。みなさんが進路を決めるうえでも役に立つでしょう。
posted by アヴァンセ at 18:56| 千葉 晴れ| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月30日

抜き打ちテストのパラドックス

抜き打ちテストのパラドックス

 ―ある日、花子先生はいいました。
「来週の月曜から金曜までの間に抜き打ちテストをします。 ただし『抜き打ちテスト』とは当日にならないと行われるかどうか分からないテスト、と定義します」
そこで、太郎くんは無表情で考えました。
「少なくとも、金曜にテストはできないな。木曜日までにテストがなかった時点で金曜にテストをすることが分かってしまう。これは抜き打ちテストの定義に沿わないからな。ん?そうすると木曜日にも抜き打ちテストはできない!水曜日までにテストがなかった時点で、金曜日の可能性はないから木曜日にテストをすると分かってしまう。そうすると、同じ論理で水曜もダメだし、火曜、月曜もダメだ。つまり抜き打ちテストをすることはできない!!」
太郎くんが安心していると、翌週の木曜日。
「では、今から抜き打ちテストを行います。」
慌てて太郎くんは反論します。
「先生、抜き打ちテストはできないはずです。なぜならばかくかくしかじか...」
すると花子先生は右口角をあげ、不気味に笑いながら言いました。
「太郎君は今日、テストはないと思ってたのですよね?ならば抜き打ちテストは成立していることになります。」
「正しいことが通るとは限らないってことさ。」
次郎くんは太郎くんをなぐさめました。

現実問題として、抜き打ちテストは実行できる訳である。ならば、太郎くんの論理はどこかが間違っているのだろうか?(ここからはよーーく頭を使って読んでください)
 このパラドックスは「この文章はウソである」というパラドックスによく似ている。この文章を真であると仮定すると矛盾が生じ、偽であると仮定しても矛盾が生じる。花子先生の最初の発言も同様なのである。太郎くんは花子先生の発言を信じ、矛盾を導き、先生の発言を偽だと思ったのである。しかし先生の発言は先生を信じない場合に限り真になりえるのである!(そして抜き打ちテストは行われた。)ただし、この構造を見抜くことができるのは花子先生と太郎くんの1つ上の世界から眺めているからであり、太郎くんにとっては解決のしようがないパラドックスである。太郎くんが先生を信じれば(抜き打ちテストが行われると信じれば)、抜き打ちテストはないことになり、先生を信じなければ(抜き打ちテストが行われないと信じれば)、抜き打ちテストは行われることになってしまうのである。
 このようなパラドックスは単なる言葉遊びの上ではなく数学にも厳密に構成できることをゲーテル(1906-1978)が証明している。すなわち数学には「真であるとも偽であるとも証明できない命題が存在する」ことを証明したのである。これは数学者にとってショックな事件であった。○○予想と名のつくものの中には証明もできないし反証もできないものがあるかもしれないのである!

(関)
posted by アヴァンセ at 11:56| 千葉 晴れ| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月24日

「文化資本」度を高めよう!

「文化資本」度を高めよう!
〜NHK教育TV・高校講座+外国語講座を見よう!〜
 
みなさんにお勧めしたいテレビ番組があります。NHK高校講座と各国語の語学講座です。
 高校講座は、世界史・日本史・地理では映像資料を豊富に使った番組構成がなされ、時代・地域のイメージをつかみやすく、普段の勉強の補強にもなるでしょう。物理・化学・生物・地学も実験・観察等が積極的におこなわれ、これは受験勉強でウィークポイントとなりやすいところでもあるので大いに利用して欲しいと思います。放映時間は週1回、平日午後の30分で、皆さんには見られないと思われる時間が多いのですが、DVD・ビデオに録画するなどして、1年分コレクションするとよいでしょう。高3だけでなく高1,2生にも必ず役に立つでしょう。内容は基本的なことが多いのですが、まさにそれが重要なのだ、ということを特に強調しておきたいと思います。番組は見っぱなしではいけません。必ず教科書で関連事項をおさらいし、受験レベルに結びつけることが重要です。また、録画してもためてしまうと、なかなか見られないので、必ず毎回すぐに見るように習慣づけましょう。

 語学講座は、英語はもちろんのこと、フランス語、イタリア語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語、朝鮮語、中国語、アラビア語など豊富にあって、いろいろ楽しめます。言葉だけでなく、その国の歴史・文化・生活・習慣なども知ることが出来て、ちょっとした海外旅行の気分も味わえます。耳慣れない音の外国語をかじるのはとても楽しいことです。我々の日常生活にも様々な言語が入り込んでいることが分かり、新しい発見があります。たとえば、ミルフィーユというパイ状の生地を薄く重ねイチゴやクリームを挟んだお菓子がありますが、「ミルフィーユ」の意味を知っていますか。「アヴァンセ(まえへ進んだ)」とおなじフランス語です。でも、本当のフランス語の発音は、ミルフィーユでなくミル・フゥォイユ。意味は「ミル」が「千の」、日本人にとって発音が難しい「フゥォイユ」は「葉っぱ」です。たしかに、葉を何枚も重ねたような形ですね。「ミルフィーユ」が「千葉」だと思うと、何かおかしいですね。ところで、誤った発音「フィーユ」になると「少女」を意味してしまいます。「千人の少女」を食べてはいけません。こんなことを知っても何の役にも立たないかもしれません。しかし、知らないより知っていた方が、毎日が楽しくなることは間違いありません。

 「ミルフィーユ」はともかく、外国の歴史・文化・生活・習慣を知ることは、大学入試に関しても、実はきわめて「役に立つ」ことなのです。特に、文系の科目は、その前提として、教養・常識を要求します。最近ではそれを「文化資本」と呼ぶことがあります。この言葉はフランスの社会学者ブルデューが提唱した言葉で、高等教育の受験成功者を分析したときに、彼らの日常の生活習慣環境を「文化資本」という切り口(枠組)で見ると、その成功の理由をよく説明できたので、注目された言葉なのです。社会科学では「分析枠組として有効である」と言います。アヴァンセでは皆さんの「文化資本」度を高めるために様々な努力をしています。それが難関大合格への前提となり、王道だからです。外国語講座を楽しむことは、さらにそれを補強することになるでしょう。「勉強でいそがしく、そんなヒマはありません」とよく言う人がいますが、全く見当違いの発言です。大いに楽しんで勉強してください。

 放送予定表はNHKのホームページにあります。全体像を把握するのに役に立ちます。また、ホームページには、参考資料や復習問題などがあって便利です。

(松島)
posted by アヴァンセ at 18:40| 千葉 晴れ| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする