抜き打ちテストのパラドックス
―ある日、花子先生はいいました。
「来週の月曜から金曜までの間に抜き打ちテストをします。 ただし『抜き打ちテスト』とは当日にならないと行われるかどうか分からないテスト、と定義します」
そこで、太郎くんは無表情で考えました。
「少なくとも、金曜にテストはできないな。木曜日までにテストがなかった時点で金曜にテストをすることが分かってしまう。これは抜き打ちテストの定義に沿わないからな。ん?そうすると木曜日にも抜き打ちテストはできない!水曜日までにテストがなかった時点で、金曜日の可能性はないから木曜日にテストをすると分かってしまう。そうすると、同じ論理で水曜もダメだし、火曜、月曜もダメだ。つまり抜き打ちテストをすることはできない!!」
太郎くんが安心していると、翌週の木曜日。
「では、今から抜き打ちテストを行います。」
慌てて太郎くんは反論します。
「先生、抜き打ちテストはできないはずです。なぜならばかくかくしかじか...」
すると花子先生は右口角をあげ、不気味に笑いながら言いました。
「太郎君は今日、テストはないと思ってたのですよね?ならば抜き打ちテストは成立していることになります。」
「正しいことが通るとは限らないってことさ。」
次郎くんは太郎くんをなぐさめました。
現実問題として、抜き打ちテストは実行できる訳である。ならば、太郎くんの論理はどこかが間違っているのだろうか?(ここからはよーーく頭を使って読んでください)
このパラドックスは「この文章はウソである」というパラドックスによく似ている。この文章を真であると仮定すると矛盾が生じ、偽であると仮定しても矛盾が生じる。花子先生の最初の発言も同様なのである。太郎くんは花子先生の発言を信じ、矛盾を導き、先生の発言を偽だと思ったのである。しかし先生の発言は先生を信じない場合に限り真になりえるのである!(そして抜き打ちテストは行われた。)ただし、この構造を見抜くことができるのは花子先生と太郎くんの1つ上の世界から眺めているからであり、太郎くんにとっては解決のしようがないパラドックスである。太郎くんが先生を信じれば(抜き打ちテストが行われると信じれば)、抜き打ちテストはないことになり、先生を信じなければ(抜き打ちテストが行われないと信じれば)、抜き打ちテストは行われることになってしまうのである。
このようなパラドックスは単なる言葉遊びの上ではなく数学にも厳密に構成できることをゲーテル(1906-1978)が証明している。すなわち数学には「真であるとも偽であるとも証明できない命題が存在する」ことを証明したのである。これは数学者にとってショックな事件であった。○○予想と名のつくものの中には証明もできないし反証もできないものがあるかもしれないのである!
(関)
2011年12月30日
2011年11月24日
「文化資本」度を高めよう!
「文化資本」度を高めよう!
〜NHK教育TV・高校講座+外国語講座を見よう!〜
みなさんにお勧めしたいテレビ番組があります。NHK高校講座と各国語の語学講座です。
高校講座は、世界史・日本史・地理では映像資料を豊富に使った番組構成がなされ、時代・地域のイメージをつかみやすく、普段の勉強の補強にもなるでしょう。物理・化学・生物・地学も実験・観察等が積極的におこなわれ、これは受験勉強でウィークポイントとなりやすいところでもあるので大いに利用して欲しいと思います。放映時間は週1回、平日午後の30分で、皆さんには見られないと思われる時間が多いのですが、DVD・ビデオに録画するなどして、1年分コレクションするとよいでしょう。高3だけでなく高1,2生にも必ず役に立つでしょう。内容は基本的なことが多いのですが、まさにそれが重要なのだ、ということを特に強調しておきたいと思います。番組は見っぱなしではいけません。必ず教科書で関連事項をおさらいし、受験レベルに結びつけることが重要です。また、録画してもためてしまうと、なかなか見られないので、必ず毎回すぐに見るように習慣づけましょう。
語学講座は、英語はもちろんのこと、フランス語、イタリア語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語、朝鮮語、中国語、アラビア語など豊富にあって、いろいろ楽しめます。言葉だけでなく、その国の歴史・文化・生活・習慣なども知ることが出来て、ちょっとした海外旅行の気分も味わえます。耳慣れない音の外国語をかじるのはとても楽しいことです。我々の日常生活にも様々な言語が入り込んでいることが分かり、新しい発見があります。たとえば、ミルフィーユというパイ状の生地を薄く重ねイチゴやクリームを挟んだお菓子がありますが、「ミルフィーユ」の意味を知っていますか。「アヴァンセ(まえへ進んだ)」とおなじフランス語です。でも、本当のフランス語の発音は、ミルフィーユでなくミル・フゥォイユ。意味は「ミル」が「千の」、日本人にとって発音が難しい「フゥォイユ」は「葉っぱ」です。たしかに、葉を何枚も重ねたような形ですね。「ミルフィーユ」が「千葉」だと思うと、何かおかしいですね。ところで、誤った発音「フィーユ」になると「少女」を意味してしまいます。「千人の少女」を食べてはいけません。こんなことを知っても何の役にも立たないかもしれません。しかし、知らないより知っていた方が、毎日が楽しくなることは間違いありません。
「ミルフィーユ」はともかく、外国の歴史・文化・生活・習慣を知ることは、大学入試に関しても、実はきわめて「役に立つ」ことなのです。特に、文系の科目は、その前提として、教養・常識を要求します。最近ではそれを「文化資本」と呼ぶことがあります。この言葉はフランスの社会学者ブルデューが提唱した言葉で、高等教育の受験成功者を分析したときに、彼らの日常の生活習慣環境を「文化資本」という切り口(枠組)で見ると、その成功の理由をよく説明できたので、注目された言葉なのです。社会科学では「分析枠組として有効である」と言います。アヴァンセでは皆さんの「文化資本」度を高めるために様々な努力をしています。それが難関大合格への前提となり、王道だからです。外国語講座を楽しむことは、さらにそれを補強することになるでしょう。「勉強でいそがしく、そんなヒマはありません」とよく言う人がいますが、全く見当違いの発言です。大いに楽しんで勉強してください。
放送予定表はNHKのホームページにあります。全体像を把握するのに役に立ちます。また、ホームページには、参考資料や復習問題などがあって便利です。
(松島)
〜NHK教育TV・高校講座+外国語講座を見よう!〜
みなさんにお勧めしたいテレビ番組があります。NHK高校講座と各国語の語学講座です。
高校講座は、世界史・日本史・地理では映像資料を豊富に使った番組構成がなされ、時代・地域のイメージをつかみやすく、普段の勉強の補強にもなるでしょう。物理・化学・生物・地学も実験・観察等が積極的におこなわれ、これは受験勉強でウィークポイントとなりやすいところでもあるので大いに利用して欲しいと思います。放映時間は週1回、平日午後の30分で、皆さんには見られないと思われる時間が多いのですが、DVD・ビデオに録画するなどして、1年分コレクションするとよいでしょう。高3だけでなく高1,2生にも必ず役に立つでしょう。内容は基本的なことが多いのですが、まさにそれが重要なのだ、ということを特に強調しておきたいと思います。番組は見っぱなしではいけません。必ず教科書で関連事項をおさらいし、受験レベルに結びつけることが重要です。また、録画してもためてしまうと、なかなか見られないので、必ず毎回すぐに見るように習慣づけましょう。
語学講座は、英語はもちろんのこと、フランス語、イタリア語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語、朝鮮語、中国語、アラビア語など豊富にあって、いろいろ楽しめます。言葉だけでなく、その国の歴史・文化・生活・習慣なども知ることが出来て、ちょっとした海外旅行の気分も味わえます。耳慣れない音の外国語をかじるのはとても楽しいことです。我々の日常生活にも様々な言語が入り込んでいることが分かり、新しい発見があります。たとえば、ミルフィーユというパイ状の生地を薄く重ねイチゴやクリームを挟んだお菓子がありますが、「ミルフィーユ」の意味を知っていますか。「アヴァンセ(まえへ進んだ)」とおなじフランス語です。でも、本当のフランス語の発音は、ミルフィーユでなくミル・フゥォイユ。意味は「ミル」が「千の」、日本人にとって発音が難しい「フゥォイユ」は「葉っぱ」です。たしかに、葉を何枚も重ねたような形ですね。「ミルフィーユ」が「千葉」だと思うと、何かおかしいですね。ところで、誤った発音「フィーユ」になると「少女」を意味してしまいます。「千人の少女」を食べてはいけません。こんなことを知っても何の役にも立たないかもしれません。しかし、知らないより知っていた方が、毎日が楽しくなることは間違いありません。
「ミルフィーユ」はともかく、外国の歴史・文化・生活・習慣を知ることは、大学入試に関しても、実はきわめて「役に立つ」ことなのです。特に、文系の科目は、その前提として、教養・常識を要求します。最近ではそれを「文化資本」と呼ぶことがあります。この言葉はフランスの社会学者ブルデューが提唱した言葉で、高等教育の受験成功者を分析したときに、彼らの日常の生活習慣環境を「文化資本」という切り口(枠組)で見ると、その成功の理由をよく説明できたので、注目された言葉なのです。社会科学では「分析枠組として有効である」と言います。アヴァンセでは皆さんの「文化資本」度を高めるために様々な努力をしています。それが難関大合格への前提となり、王道だからです。外国語講座を楽しむことは、さらにそれを補強することになるでしょう。「勉強でいそがしく、そんなヒマはありません」とよく言う人がいますが、全く見当違いの発言です。大いに楽しんで勉強してください。
放送予定表はNHKのホームページにあります。全体像を把握するのに役に立ちます。また、ホームページには、参考資料や復習問題などがあって便利です。
(松島)
2011年10月19日
四角い頭を面取りしてみる
四角い頭を面取りしてみる
まずは頭の体操に挑戦してほしい。目標時間は5分。正解は一番下に用意した。
閉店後の洋菓子店で、売れ残った3種類の商品(シュークリーム、タルト、チーズケーキの各一つ)を店員A〜Dの4人が分けて持ち帰ることとなった。A〜Dは、それぞれ商品を一つだけ選んで希望を出し、その希望が他の誰とも重ならなかった場合に、その商品を持ち帰ることができる。
そこで、4人は、自分以外の3人の希望について次のように予測し、自分の希望がかなう可能性のある商品を選ぶこととした。
Aは、「他の3人はみなシュークリームを選ぶ」と予測した。
Bは、「Cはチーズケーキを選ぶ」と予測した。
Cは、「Dはタルトを選ぶ」と予測した。
Dは、「AかBのうち1人のみがチーズケーキを選ぶ」と予測した。
4人が同時に希望を出したところ、上記4つの予測はどれも外れていた。このとき、A〜Dが選んだ商品はそれぞれ何であったか。
上の問題は、ある年の国家公務員T種(いわゆるキャリア官僚候補)採用試験の教養試験のうちの一題(本来は五択のマークシートだが改変した)。国家T種の試験は、教養試験(マークシート)、専門試験(マークシート、記述)、総合試験(小論文)、人物試験(面接)からなり、合格すれば省庁訪問を経て採用となる。
教養試験は時事問題から始まり、英語の長文読解、数学、理科、社会など分野は多岐にわたり、大学入試のセンター試験を彷彿とさせる。ただ特徴的なのが、上のような「判断推理」の問題が全体の2割ほどを占めるところだ。実際の公務員の業務で「推理力」がどこまで必要かは分からないが、頭の回転、機転の利き具合を試しているのだろう。
さて、何故このような問題を紹介したのか。それは、上でセンター試験らしいと言ったが、必要とされる力は大学入試にも通じるところがあると思ったからだ。
例えば理科、特に生物では、近年(と十年以上も言われてきているが)知識だけでは解けない「考察型」の問題が増えてきている。以前は上位の国立で少し出るくらいだったが、今ではセンター試験にまで影響が広まってきている。
さて、そのような問題に求められているのは、端的に言えば「柔軟な思考力」。ただ、それだと漠然としているので、必要な要素を挙げるとすれば、「理解力」と「論理力」と僕は考える。上で知識では解けないと言ったが、問題文にヒントや材料は与えられている。第一段階としては、まずその材料を過不足無く理解することが必要である。例えば上の問題を考える際、「予測がどれも外れていた」ことの他に、「自分の希望がかなう可能性のある商品を選んだ」ことを忘れてはならない。
また考察問題では、得られた実験結果から合理的な仮説を導く力が試される。そこには論理的な矛盾は許されない。上の問題で、「他の3人はみなシュークリームを選んだ」の否定は、「誰もシュークリームを選ばなかった」ではないことに注意しよう。この辺りは数学TAの「論理と集合」の分野を思い出してほしい。
いわゆる本格的な「論理パズル」となると、誰かが嘘をついていたり、また互いに非公開な情報を隠し持っていたりと、かなり煩雑な設定のものもある。公務員試験ではそのような問題も出されることもあるが、幸いにして大学入試の考察問題は実験結果に基づくものなので、そこまで意地の悪いものは見たことはない。
ただし、小論文や総合問題はこの限りではない。08年度入試において、東京工業大学の後期日程の小論文で、本格的な論理パズルが出題されている(自分のかぶっている帽子の色を、他人の発言から考える問題。他人にとっては公開された情報だが、自分には見えない)。
そんなわけで、普段の勉強に疲れてきたら、ちょっと違った頭の使い方を鍛えてみてはどうだろう。言ってみれば頭の柔軟体操。角を取って、すっきりした頭でまた机に向かえると理想的かもしれない。
(上の問題の正解)
A:タルト、B:タルト、C:シュークリーム、
D:シュークリーム。ヒントは本文中に示した。
(西原)
まずは頭の体操に挑戦してほしい。目標時間は5分。正解は一番下に用意した。
閉店後の洋菓子店で、売れ残った3種類の商品(シュークリーム、タルト、チーズケーキの各一つ)を店員A〜Dの4人が分けて持ち帰ることとなった。A〜Dは、それぞれ商品を一つだけ選んで希望を出し、その希望が他の誰とも重ならなかった場合に、その商品を持ち帰ることができる。
そこで、4人は、自分以外の3人の希望について次のように予測し、自分の希望がかなう可能性のある商品を選ぶこととした。
Aは、「他の3人はみなシュークリームを選ぶ」と予測した。
Bは、「Cはチーズケーキを選ぶ」と予測した。
Cは、「Dはタルトを選ぶ」と予測した。
Dは、「AかBのうち1人のみがチーズケーキを選ぶ」と予測した。
4人が同時に希望を出したところ、上記4つの予測はどれも外れていた。このとき、A〜Dが選んだ商品はそれぞれ何であったか。
上の問題は、ある年の国家公務員T種(いわゆるキャリア官僚候補)採用試験の教養試験のうちの一題(本来は五択のマークシートだが改変した)。国家T種の試験は、教養試験(マークシート)、専門試験(マークシート、記述)、総合試験(小論文)、人物試験(面接)からなり、合格すれば省庁訪問を経て採用となる。
教養試験は時事問題から始まり、英語の長文読解、数学、理科、社会など分野は多岐にわたり、大学入試のセンター試験を彷彿とさせる。ただ特徴的なのが、上のような「判断推理」の問題が全体の2割ほどを占めるところだ。実際の公務員の業務で「推理力」がどこまで必要かは分からないが、頭の回転、機転の利き具合を試しているのだろう。
さて、何故このような問題を紹介したのか。それは、上でセンター試験らしいと言ったが、必要とされる力は大学入試にも通じるところがあると思ったからだ。
例えば理科、特に生物では、近年(と十年以上も言われてきているが)知識だけでは解けない「考察型」の問題が増えてきている。以前は上位の国立で少し出るくらいだったが、今ではセンター試験にまで影響が広まってきている。
さて、そのような問題に求められているのは、端的に言えば「柔軟な思考力」。ただ、それだと漠然としているので、必要な要素を挙げるとすれば、「理解力」と「論理力」と僕は考える。上で知識では解けないと言ったが、問題文にヒントや材料は与えられている。第一段階としては、まずその材料を過不足無く理解することが必要である。例えば上の問題を考える際、「予測がどれも外れていた」ことの他に、「自分の希望がかなう可能性のある商品を選んだ」ことを忘れてはならない。
また考察問題では、得られた実験結果から合理的な仮説を導く力が試される。そこには論理的な矛盾は許されない。上の問題で、「他の3人はみなシュークリームを選んだ」の否定は、「誰もシュークリームを選ばなかった」ではないことに注意しよう。この辺りは数学TAの「論理と集合」の分野を思い出してほしい。
いわゆる本格的な「論理パズル」となると、誰かが嘘をついていたり、また互いに非公開な情報を隠し持っていたりと、かなり煩雑な設定のものもある。公務員試験ではそのような問題も出されることもあるが、幸いにして大学入試の考察問題は実験結果に基づくものなので、そこまで意地の悪いものは見たことはない。
ただし、小論文や総合問題はこの限りではない。08年度入試において、東京工業大学の後期日程の小論文で、本格的な論理パズルが出題されている(自分のかぶっている帽子の色を、他人の発言から考える問題。他人にとっては公開された情報だが、自分には見えない)。
そんなわけで、普段の勉強に疲れてきたら、ちょっと違った頭の使い方を鍛えてみてはどうだろう。言ってみれば頭の柔軟体操。角を取って、すっきりした頭でまた机に向かえると理想的かもしれない。
(上の問題の正解)
A:タルト、B:タルト、C:シュークリーム、
D:シュークリーム。ヒントは本文中に示した。
(西原)

